治験ボランティアに参加しました

 1. はじめに

2. 参加した臨床研究について

3. 実際の試験の流れ

4. ボランティアで得たこと

 

1.はじめに

 2020年1月に治験(臨床研究)のボランティアに初めて参加しました。臨床研究とは、ヒトを対象に行われる医学研究のことです。皆さんがよく聞く"治験"とは、臨床研究の中でも新薬の安全性・有効性を評価して当局に申請するために行う試験であり、臨床試験の一部に含まれます。

 よく闇バイトと称される治験バイトですが、その実態は皆さんよく分からないと思います。今回、私が体験した内容をお伝えしていきたいと思います。

 

2. 参加した臨床試験について

 今回は千葉県にある国立研究施設で行われた研究に参加しました。

 参加した研究では、脳に発現する酵素X(詳細は伏せます)の働きを定量するため、放射性同位体で標識したリガンド(酵素Xの基質)を投与し、その薬物動態や脳内での分布をPET/CTで評価するというものです。使用した核種は11Cでした。*1

 

3.実際の試験の流れ

 今回参加した試験は2日間の日程で行われました。また、試験の参加対象は20-50歳の男性でした。日程調整を含め、試験全体を通してCRAさんに対応して頂きました。また、研究責任者の先生はとても丁寧で、私の質問にも色々と答えて頂きました。

 

[Day1: 頭部MRI検査] 1月上旬 10:00~11:00 (1時間)

 まず最初に研究責任医師の先生から研究内容の説明を頂き、同意書に署名しました。 

1日目は本番のPET/CT試験に向けて、脳の構造を評価したり、脳血管疾患が無いか確かめるため、頭部MRIを1時間程行いました。また、採血(22G留置針、20mL程)及び採尿を行いました。特に苦痛に感じることは無かったです。

 

[Day2: PCT/CT検査] 第1回目の2週間後 14:00~16:30 (2.5時間)

2日目が本番の試験です。以下の流れで行われました。

 

(1) 準備 

↓管理区域に入室(内部はとても綺麗でした)

↓検査着に着替え

↓PET室へ入室(研究員の方が大勢準備しており驚きました)、問診

↓PET/CT(Siemens Biograph)に乗り、頭部を固定

↓ PET検査に先立ち、頭部CTを撮影 (5分くらい)

 

(2) PET検査 

↓頭部をPETに突っ込んだ形で両腕を固定

  (i)Aライン確保(左上腕動脈より)

 ↓左上腕に穴あきドレープをかけ、穿刺部位をイソジン消毒

    ↓穿刺部位を局所麻酔(26G針)

    ↓22G留置針で上腕動脈に穿刺 (血管に刺さるとき針で押される感覚がありました)

    ↓カテーテル留置

 ※寝た状態で操作されたので、穿刺部位が見えず怖かったです。

(ii) 静脈ルート確保

    ↓右肘正中皮静脈へ22G留置針で穿刺、カテーテル留置

 ↓静脈より検査前の採血

(iii) PET検査

    ↓研究所のサイクロトロンで合成した370MBqの[11C]リガンドを静脈内投与

 ↓一定時間ごとに動脈より採血(最初は10s, 30sおき位に採血、後半は10mごとに採血)

   ↓90分間PET撮影を続け、横になりながらひたすら時が過ぎるのを待つ(採血は合計32回)

 ※同じ体勢を取り続けるのがしんどかったです、特にAラインがある左腕は常に伸展していたので辛かったです。試験中は横になりながらですが研究員のMDの方と色々お話し出来ました。

(iv)検査終了後

 ↓Aライン抜去〜止血

 ↓右腕の静脈ライン抜去

 ↓検査後の採血のため右腕より再度、末梢静脈路確保

  ※なかなかルート確保できず、3回ほど失敗

 ↓採血

   ↓PET検査終了、問診、着替え、帰宅

 

4, ボランティアで得た事

(1) 研究協力金 : Day1(MRI) 10,000円   

                          Day2(PET) 25,000円  合計35, 000円 (拘束時間は3.5h)

(2) 検査データ: 合計3回分の血液・尿検査のデータを頂きました(血算, 生化学)。

(3) 気づき: 実験動物の気持ちが分かりました。

(4) 放射線: 被曝量は1.8 mSv

 

6, 最後に

 今回ボランティアに参加し、臨床研究は医学の発展に大切な研究であると共に、臨床試験に際し必要な前臨床試験(動物実験)の重要さを実感しました。今後も是非参加していきたいと思います。皆さまも興味がある方は是非チャレンジしてみてください、紹介いたします(被曝しない試験もあります)。

 

*1:半減期は20.4分です